「ご飯だよー!」
台所から声をかけても、返事がない。リビングに顔を出して、もう一度呼んでも反応がない。近くまで行って「聞いてる!?」と言うと、ようやくこちらを見る。
こんなことが1日に何度も続くと、だんだんイライラしてきますよね。
「また返事しない」 「何回言えば分かるの?」 「私の話、そんなにどうでもいいの?」
ただ返事がないだけなのに、無視されたような気持ちになって、つい強い言い方になってしまうこともあります。
でも、こういう子の中には、本当に「呼びかけに気づきにくい」子がいます。
わざと無視しているわけでも、親を困らせようとしているわけでもない。
そもそも、こちらの声が本人の中で「今、自分に話しかけられている」という刺激として、十分にキャッチされていないことがあるんです。
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発達の背景を知り、子どもの行動を理解できるようになると、親側のイライラが和らぎ、関わり方の選択肢も増えていきます。
私自身が、イライラを手放すうえで助けられてきた考え方をまとめたロードマップを作っています。よければ、こちらから受け取ってくださいね。
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では、話しかけても返事をしない子には、どのように関わればいいのでしょうか?
この記事では、世界的な作業療法士であるDunn博士の感覚処理モデルと「感覚プロファイル」を手がかりに、「返事をしない」「呼んでも気づかない」という行動をどう捉えればいいのかを考えていきます。
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1|「返事をしない=聞く気がない」とは限らない
本や図鑑、ブロック、動画、遊びなどに夢中になっていると、こちらが声をかけてもまったく反応しない子がいます。
親からすると「聞いているのに返事をしていない」ように見えますが、本人の中では、そもそも十分に気づけていないことがあります。
何を隠そう、私自身もこれがあります。
何かに集中していると、周りで人が話していても、あとから「え?私に話しかけてた?」となることがあるのです。娘にも同じようなことがあります。
私の感覚としては、聞こえているのに無視しているというより、本当に「聞こえていない」に近いんです。
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2|感覚には「気づきやすさ」の個人差がある
ここで知ってほしいのが、感覚の閾値(いきち)という考え方です。
Dunn博士の感覚処理モデルでは、人によって「どのくらい刺激が入ると気づくのか」に違いがあると考えます。
少しの音でもすぐ気づく人もいれば、ある程度大きな刺激になって初めて気づく人もいます。
同じ声の大きさ、同じ環境であっても、刺激の受け取り方はみんな同じではありません。
私はよく、これをコップに例えています。
少し注がれただけで「もういっぱい」と感じる人もいれば、かなり注がれてからようやく「入ってきた」と感じる人もいる。
どちらが良い悪いではありません。
刺激に気づくために必要な量が、人によって違うということです。
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3|感覚プロファイルでいう「低登録」
感覚プロファイルとは、Dunn博士によって開発された、個人の感覚処理特性(感じ方の傾向)を包括的に評価する国際標準の心理検査です。
感覚プロファイルでは、感覚刺激への反応の傾向をいくつかのパターンで捉えます。その一つが「低登録」です。
低登録傾向がある人は、周りの人なら気づくような刺激を拾いにくかったり、反応するまでに時間がかかったりすることがあります。
例えば、呼ばれても気づかない、話しかけられても反応が遅い、ぼーっとしているように見える、大勢の会話に入りそびれる、といった姿として現れることがあります。
私は低登録++です。100人に2人レベルだと知った時は驚きました。
ただし、「返事をしない=低登録」と判断できるわけではありません。
疲れている、周囲が騒がしい、覚醒レベルが低い、注意を別のことに使っているなど、色々な背景が考えられます。
だからこそ、
「また無視してる」
と決めつける前に、
「もしかして、今は気づきにくいのかな?」
という見方も持っておくと、対応の選択肢が増えます。
※刺激に気付いていても、反応していないように見える場合もあるので「低反応」と表現されることもあります。
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4|集中している時は「水の中」にいるような感じ
私自身の感覚でいうと、何かに深く入り込んでいる時は、プールで潜水している時に、水面の上から誰かが話しかけている感じに近いです。
これは私個人の感覚です。浮上には、時間がかかります。
何か音がしたような気はする。でも、その内容まで頭に入ってこない。
「目の前のこと」や「自分の中の思考」に多くの注意を使っているので、外から入ってくる刺激にまでリソースを割きにくい感覚があります。
これはあくまでも、私自身の個人的な感覚です。
「みんなが同じように感じている」ということではありませんが、こういうふうに感じている人もいるんだな、くらいに受け取って下さい。
そして私は、この感覚の特徴を悪いものだとは思っていません。
私は興味を持ったことなら何時間でも調べられますし、発達についての勉強も続けられます。作曲でも、一つのことに長く没頭できたことが受賞につながりました。
確かに、周りの刺激に気づきにくいことは、生活の中では困りごとになる場合があります。
でも見方を変えると、「周りに邪魔されず、自分の興味に深く入り込める」「他の人がノイズとなる環境でも集中できる」という強みにもなり得ます。
だから私は、「感覚を直す」ことを目標にはしません。
困る部分はサポートしながら、その子が持っている集中力そのものは大事にしてあげたいと思っています。
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5|耳だけで何とかしようとしない
返事がないと、
「〇〇ちゃん!」 「ねえ!」 「聞いてる?」 「返事して!」
と、つい声を大きくしたくなります。
でも、そもそも聴覚への働きかけに気づきにくいとなると、声掛けを強くするだけでは疲れますよね。
さらに、大声は威圧感を伴うので、言われた方だって不快に感じます。
そんな時は、耳だけに頼らない方法を使います。
近くまで行く。視界に入る。肩を軽くトントンする。手にそっと触れてから話す。
本に夢中なら、「ごめんね、ちょっといい?」と声をかけて、しおりや付箋を挟んでから、一度こちらに注意を向けてもらう方法もあります。
大切なのは、集中を無理やり奪うことではありません。
「今からあなたに話すよ」と分かるように、注意が戻ってくるための橋をかけることです。
私はペアトレで、Calm・Close・Quietという伝え方もお伝えしています。
穏やかに、近くで、静かな声で伝える。
遠くから大声で何度も呼びかけるのではなく、まず近づいて、注意がこちらに向いたことを確認してから短く伝えます。
そういえば、台所から呼びかけていた。その度伝わらずに大声を出していた…そんな保護者もいるのではないでしょうか?
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6|感じ方や感覚処理のあらわれ方は、変わることもある
ここまで読むと、
「じゃあ、この子はずっと気づきにくいままなの?」
と思う方もいるかもしれません。
感覚の特徴には、その人らしい傾向として続く部分があります。一方で、発達や経験、環境、その日の体調などによって、困りごとの出方が変わることもあります。
例えば、同じ子でも、疲れている日は呼びかけに気づきにくかったり、逆に落ち着いた環境では反応しやすかったりすることがあります。
また、成長とともに、以前より刺激に気づきやすくなったり、生活の中で困る場面そのものが減っていくこともあります。
だから、今見えている姿を「この子はずっとこう」と固定的に捉えなくて大丈夫です。
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7|最終的には「自分で自分を扱える」に近づけたい
私は、このタイプの子に対して大切なのは、「ちゃんと返事ができる子」にすることだけではないと思っています。
成長すると、自分自身で、
「私は集中していると、話しかけられても気づかないことがあるな」
と分かってくることがあります。
私自身も今はそれが分かっているので、「集中していると聞こえないことがあるから、肩をトントンして」と周りに伝えることがあります。
こうやって、自分の特徴が分かってくると、自分に合った対処法も選べるようになります。
「なんで返事しないの?」
と考えると、親と子どもが向かい合ってしまいます。
でも、
「話しかけても気づかないことがあるね。どうしたら分かりやすいかな?」
なら、親子で同じ方向を向けます。
子どもの特徴を責めるのではなく、自分の感覚や注意の向き方を知って、自分に合った方法を見つけていく。
私は、これも大切な自立の一つだと思っています。
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8|最後に
こうした「感覚の違い」は、まだ子育ての中で広く知られているとは言えません。
「返事をしない」「ぼーっとしている」と見える子も、もしかすると刺激に気づきにくいのかもしれません。もちろん決めつけることはできませんが、そんな見方もあると知っておくだけで、関わり方は変わります。
最後に、長崎大学の岩永竜一郎先生らが作成されたチラシを掲載しておきます。低登録以外にも、さまざまな感覚処理の特徴があります。
制作者である長崎大学・医歯薬学総合研究科(保健学科) 教授、 岩永竜一先生より掲載許可を頂きました。
私の主催する大人のためのオンライン幼児教室でも、こうした感覚の違いを視野に入れながら、子どもの行動の背景と、その子に合った関わり方をお伝えしています。
時には感覚プロファイル検査を行った上で、より子どもへの理解を深め、支援方法を考えさせて頂くこともあります。
今回は、「聴覚の低登録」を事例に書きましたが、今後も様々な感覚処理について紹介していきますので、「これも知りたい」というテーマがあれば、ぜひ教えてくださいね。
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まとめ
「子どもが話しかけても返事をしないこと」に悩んだ時、思い出してほしいことを3つのポイントにまとめました。
子どもの「聞いてるの?」と言いたくなる行動に悩んでいる方は、ぜひスクショして、見返せるようにして下さいね。
✔ 「無視している」と決めつけない 刺激に気づきにくかったり、集中していて呼びかけを拾えていなかったりすることがあります。
✔ 耳だけで何とかしない 近づく、視界に入る、手を握る、肩をトントンする。まずは気づける状態を作ってから伝えます。
✔ 「なんで?」を「どうしたら?」に変える 本人の特徴を一緒に知り、自分に合った対処法を見つけていくことも、自立につながります。
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子どもと向き合うと、どうしてもイライラしてしまう。優しく接しようと我慢すればするほど、ある日爆発してしまう。
実は……私もそうでした。
なぜ私が、イライラを手放し、子どもを信じて待てる母へと変わることができたのか。その過程を、ロードマップにまとめています。
また、私自身が助けられてきた心理学・脳神経学の知見をもとに、小冊子や明日から使えるシートなど、10点を配布しています。
私自身の「もっと早く知りたかった」を、ぎゅっと詰め込みました。
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はじめて私を知ってくださった方へ。
幼児教室の教員として、そして母として、子どもと関わる中で学んできたこと、気づいたことをまとめています↓

